風邪を引いてしまって随分日が空いてしまいました。
糊の話の続きです。
今日は濃さについて。
糊は使用するたびに水で溶くのですが、その濃度というのが胆だったりします、特に軸装の場合。
紙と紙の裏打ちの場合が一番薄く、布地と紙の場合はそれよりも少し濃く、切り継ぎ(構成パーツを狭い糊代で繋ぎ合わせる)がもっとも濃く、というようにくっつきにくい状況であるほど濃くします。
逆に言うと、貼り合わせる事ができるギリギリの薄さの糊を使うという事です。
本来、紙にとって糊というのは相容れぬ存在、天敵なのです。
紙は糊によって変質し、強張るというダメージを受けるのです。
掛軸という巻きと伸ばしを繰り返す表具形態においては、その構成要素は可動性を持たせるための柔らかさが要求されます。
古糊を使う理由もここにあります。(新糊を使った場合よりも仕上がりが柔らかくなるのです。)
さて、襖の場合はどうかというと、軸ほどデリケートではないので糊は2種類しか使いません。
接着のために周囲に塗る縁糊と、皺を伸ばす目的で袋張りの際に内側全体に塗る水糊の2種類です。
しかし、襖の場合も縁糊は薄い方がいいことは言うまでもありません。
濃すぎる糊は紙の強張りを生み、また紙に与えるダメージは経年劣化を早めます。
そればかりではなく、張り付けの際に生じた微少な皺も糊が薄ければ乾燥と共に伸びていきますが、糊が濃いとその伸びよりも枠と紙の接着の方が速く、皺を定着させてしまいます。
したがって「糊は薄目に」というのが理想なのですが、薄い糊は乾燥が遅く、接着力も弱いので薄すぎる糊は作業効率を落としてしまいます。
(薄目が好きな自分はいつも糊を薄く溶いてしまって、同僚に「張りづらい!」とよく文句を言われましたw)
何だかまた長くなってしまいましたが、、
最後に刷毛の使い分けについて一言。
薄い糊ほど柔らかい刷毛がよくなじみ、濃い糊にはある程度の硬さが必要です。
そのため縁糊にはコシのある豚毛や熊毛(実は狸の毛)がよく、羊毛(山羊)は裏打ちなどの薄い糊に、また馬毛は水糊によくなじみます。
熊毛>豚毛>>羊毛>馬毛
用途に応じて刷毛を使い分けられるようになると格好いいですね♪