勝手に宣伝しちゃいます。
一日目:平成21年6月5日(金)9:00~17:00
二日目:平成21年6月6日(土)9:00~17:00
場所:渋谷区立商工会館2階展示室
宮益坂途中(渋谷郵便局裏)
風邪を引いてしまって随分日が空いてしまいました。
糊の話の続きです。
今日は濃さについて。
糊は使用するたびに水で溶くのですが、その濃度というのが胆だったりします、特に軸装の場合。
紙と紙の裏打ちの場合が一番薄く、布地と紙の場合はそれよりも少し濃く、切り継ぎ(構成パーツを狭い糊代で繋ぎ合わせる)がもっとも濃く、というようにくっつきにくい状況であるほど濃くします。
逆に言うと、貼り合わせる事ができるギリギリの薄さの糊を使うという事です。
本来、紙にとって糊というのは相容れぬ存在、天敵なのです。
紙は糊によって変質し、強張るというダメージを受けるのです。
掛軸という巻きと伸ばしを繰り返す表具形態においては、その構成要素は可動性を持たせるための柔らかさが要求されます。
古糊を使う理由もここにあります。(新糊を使った場合よりも仕上がりが柔らかくなるのです。)
さて、襖の場合はどうかというと、軸ほどデリケートではないので糊は2種類しか使いません。
接着のために周囲に塗る縁糊と、皺を伸ばす目的で袋張りの際に内側全体に塗る水糊の2種類です。
しかし、襖の場合も縁糊は薄い方がいいことは言うまでもありません。
濃すぎる糊は紙の強張りを生み、また紙に与えるダメージは経年劣化を早めます。
そればかりではなく、張り付けの際に生じた微少な皺も糊が薄ければ乾燥と共に伸びていきますが、糊が濃いとその伸びよりも枠と紙の接着の方が速く、皺を定着させてしまいます。
したがって「糊は薄目に」というのが理想なのですが、薄い糊は乾燥が遅く、接着力も弱いので薄すぎる糊は作業効率を落としてしまいます。
(薄目が好きな自分はいつも糊を薄く溶いてしまって、同僚に「張りづらい!」とよく文句を言われましたw)
何だかまた長くなってしまいましたが、、
最後に刷毛の使い分けについて一言。
薄い糊ほど柔らかい刷毛がよくなじみ、濃い糊にはある程度の硬さが必要です。
そのため縁糊にはコシのある豚毛や熊毛(実は狸の毛)がよく、羊毛(山羊)は裏打ちなどの薄い糊に、また馬毛は水糊によくなじみます。
熊毛>豚毛>>羊毛>馬毛
用途に応じて刷毛を使い分けられるようになると格好いいですね♪
糊は襖の張替、表具の裏打ちに欠かせないものです。
糊の出来具合が表具の仕上がりの良さを決め、襖の張替においてはさらに作業のスピードをも左右します。
用途によって適切な濃度があり、またその濃度に適した刷毛が存在するのです。
ということで今日は糊と刷毛のお話です。
掛軸の場合、糊はいわゆる生麩糊を使います。
これは小麦粉をコトコト煮詰めて作ります。
本格的には煮込んだ糊を壺に入れて土に埋め、黴が生えるまで熟成させます。
(といっても黴が生えるのは表面だけで、もちろんそれを取り除いて使います。)
熟成させる事によって接着力を極限まで落とし、必要最小限の力で紙を張り、その変質を避けるわけです。
しかし、これはかなり面倒くさ~い作業なので、現代では化学糊、合成糊を使う事も多くなりました。
長期間の保存を目的としない襖などは基本的に合成糊を使います。
写真は「アミノール」という合成澱粉糊です。
(実はこれを作っているメーカーが筆者の実家のすぐ近くにあるということを最近知りました。)
糊は使用するたびに水で溶いて適切な濃度で使います。
ちょっと話が長くなってしまったので、刷毛の話は次に回しましょう^^;
展示会で買った刷毛が届きました^^
受注生産のため持ち帰れなかったので待ちわびましたよ。「打ち刷毛」という裏打ちの際に使う刷毛です。今までは代用打ち刷毛を使っていたのですが、そろそろ本格的なものが欲しいと思っていたのです。
裏打ちはごく薄い糊を使うので、貼った後に上から叩き付けるという動作を行って紙と布、もしくは紙同士を接着させます。そうすることによって繊維同士が絡み合って強く接着され、また繊維の張りの違いが延ばされて皺ができにくくなるのです。
そのためには刷毛の先端面に広い面積が、また刷毛自体に重さが必要とされます。だから写真のようにとても太い刷毛になっています。
しかし、刷毛というのは細くても作るのが難しいですが、逆に太くてもまた技術を要するそうです。なので打ち刷毛を作れる職人さんは少ないのだとか。