見本帳「銀河」より雲竜紙を4種類並べて使います。
トーンを抑えた色調での仄かなグラデーションが、落ち着いた中にも動きのある表情を演出します。
襖の開放の度合いによってその印象は幾重にも変化するでしょう。
通路側には白地に不均一な小豆色の縦縞の入った文華紙を用います。
重力に従って上から下へと落ちる平行線は床と垂直に交わり、奥へと向かう方向性を強く意識させます。
襖は元来、扉としての役割と壁としての役割を併存していますが、ここでは壁としての属性を強化し視線を通路の奥へと誘います。
通路の襖は部屋の内側においては、もはや通路としての意味を完全に消失します。
襖の本質はその二面性であるといっても過言ではないでしょう。
「錦2069」その細かな三角形が連続する幾何模様は薄氷に走る亀裂を連想させます。
虚(うつ)と現(うつつ)、夢と現実、部屋の外と内とを隔てる境界は、薄氷程の厚さでしかないという事を人は忘れてはならないのです。
襖を含むこの世のあらゆる事象は移ろいゆく儚い存在なのです…
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